たとえば、うつ病が順調に回復していくと、少しずつ気力が出てきます。それにともない、活動量も増え、外に出て何かをしてみようという日も増してきます。
療養中の休職者には嬉しい変化に違いありません。だからこそ、気分がよく、気力もわいた後の、谷間の日にはギャップを感じ、昨日はできたのに今日はできなかったとがっかりするかもしれません。
このがっかりが落ち込みにつながり、「自分はだめな人間だ」という悲観的な思考に結びついてしまうこともあります。
しかし、思い出してください。うつ病に代表される精神疾患にはアップダウンがつきものなのです。気力がわく日もあれば、わかない日もあります。まず、それを覚えていただければ、谷間の日は「そういう日もあるんだ」と理解することができるでしょう。
すると、必要以上に自分を責めずに済むはずです。
そのような回復の仕方をするのが自然なのだと理解し、無理に「よい日」を続けようとしすぎないことも、生活のモチベーションを下げないひとつのコツになります。
では、谷間とも言える気力のわかない日のモチベーション維持について、具体的にどうすればよいか見ていきたいと思います。
認知行動療法の手法のひとつに「行動活性化」というものがあります。
難しい理論はさておき、考え方はごくシンプルです。
「気力がわかないからできない」のではなく、「やってみたら案外できて、気力も出る」ものだということです。
休職者には大切な「規則正しい生活リズム」を例に挙げて説明してみましょう。
休職期間の生活はどうしても乱れがちです。起床時にうつ気分を感じることも多く、なかなか寝床から出られないかもしれません。
しかし、「動こう」という気分になるのを待たずに、渋々でも起きてみたら案外やる気が出た。思ったより気分良く過ごすことができた。
一度試してみたら、いい結果が得られたので、続けて行動してみようと思えた。
行動してみたらいい気分になったので、もう一日やってみようと思った。
簡単に言えば、このようなサイクルを作り上げるやり方です。
疑わしく思えるかもしれませんが、確立された心理療法の手法のひとつです。
コツは「行動してみることで、達成感を得る。そしていい気分になる」ということ。
人間はご褒美をもらえるとわかっていれば、それに向かい努力ができる生きものですから、達成感やいい気分というご褒美を目の前に置けば、思いのほかやり遂げられてしまうのです。
まずは、「行動活性化」を利用して、おっくうになりがちな生活習慣を改善してみましょう。