適応障害には明確なストレスの元があり、ストレスが引き金になることで様々な症状があらわれます。原因が明確であるので、原因であるストレスから離れれば、症状は軽くなります。
このような特徴を持つ病気ですから、治療の第一選択は環境調整ということになるでしょう。ストレスの元から離れ、疲弊した心身を休ませることが、回復につながります。適応障害の場合、必ずしも薬物療法(服薬)を用いる必要がないのはこのためです。
不眠や不安という症状に対して、対症療法的に薬剤を用いることがあるかもしれませんが、補助的な治療と考えてください。
ストレスの元から離れて、穏やかな環境で十分な休養をとれば、適応障害は回復します。
ただ、適応障害による休職期間を心身の回復だけに費やすのは、少しもったいないのかもしれません。
心身の回復は最重要事項ですが、同じくらい大切なのは、復職後の再発リスクを低減することです。せっかく復職したのであれば、病気の再発は防ぎたいものです。
適応障害は、原因となっているストレスとの付き合い方で、状態が変わります。
復職後、新たに置かれた環境下で、どのようにして心身の健康を維持するか。
ストレスによって、再び不調をきたさないために、何か準備できることはないか。
つまり、ストレスとの付き合い方を考えておくことも、復職後を見据えた休職期間では大切です。
ストレスとの付き合い方を学ぶのに有効な心理療法があります。認知行動療法と言い、心理療法のなかでももっとも有名なものの一つです。
この認知行動療法では特に自分のものの考え方のクセに焦点を当てますが、これは自分が何をストレスと受け止めるか理解を深めるためです。
同じ出来事があっても、ある人にはストレスに感じられ、別の人には軽く受け流せるという事柄もあるでしょう。これは、単純に性格や気質の問題ではありません。
その人なりの信念やこだわりというものの見方・考え方が影響していると言うべきです。
以下の例を見ながら、より詳細に説明していきます。
職場におけるストレスから適応障害を発症した方を想定しましょう。
職場のなかで、業務は過重労働気味であり、ミスがあっても上司はフォローしてくれないという状況にありました。
Aさんは「上司は部下のフォローをするのが仕事だ。フォローをしないなんてありえない」と考えます。
Bさんは「与えられた仕事はすべて自分の責任。ミスをしても自分で取り返すべきだ」と考えます。
さて、より強いストレスを感じていたのは、Aさん、Bさんどちらでしょうか。
実のところ、答えに正解はありません。AさんもBさんもそれぞれ考え方のクセのために、強いストレスを感じていたと思われます。
どちらが発症しても不思議はないですし、どちらも発症していたかもしれません。
一人ずつ詳細を見ていきましょう。