うつ病は周期的にアップダウンを繰り返す病気だということを伝えてきました。復職可と医師が判断しても、アップダウンがなくなるわけではありません。
不調の波、谷の部分がやってきても、勤務に耐えられると判断されるとき、復職可の診断がおります。しかし、谷の部分が底上げされただけで、好不調の波は依然として残り続けます。
好調のときはよいですが、不調の谷に落ち込む時期も含めて、職場にあらかじめ復帰のための環境を整えてもらう必要があります。
可能なかぎり、休職期間中から人事担当者や上司など、復帰後の環境調整を依頼できる相手と連絡を取り合っておきましょう。担当者に病気についての理解を深めてもらい、スムーズに復職するためです。
配置転換を含め、時短勤務から始めるのか、慣らし勤務はあるのか、など職場によって復職者への対応は様々です。主治医や産業医の意見も伝えることで、無理のない働き方で復職することは可能です。
大事なのは、最初から、休職前と同じレベルのパフォーマンスを自分に求めないことです。
復職したての頃は、周囲とのギャップに気が滅入るかもしれません。
以前の自分なら処理できた業務量をこなすことができない。
周囲と比べると、自分の仕事は足りていない気がする。
チームのなかで自分は足を引っ張っているのではないかと思う。
これらは復職者が感じることが多い自責の気持ちです。自分が思うように働けないことに対する心苦しさや罪の意識が伝わってきます。ですが、そのように感じる必要は全くないのです。
もともと、復職したての時期というのは、本調子ではありません。身体の病気もそうですが、病み上がりで全力疾走は無理なのです。
足を骨折した人が、ギプスがとれたからといって思い切り走ればどうなるでしょうか。ギプスがとれた足は骨がついたばかりのまだ安静にしなければならない状態です。
全力で走れば当然、骨折は悪化しますし、またギプスの生活に戻ることもあり得ます。
うつ病もこれと同じです。
復職したての時期というのは、まだ回復途中にあると理解してください。
そのときにできるベストを尽くせばよく、無理をすることは得策ではありません。
最初は短い時間から働き始め、負担の少ない業務を担当するように配慮を求めてください。
可能であるなら、対人関係もストレスのかからない配置に異動させてもらうのもよいでしょう。
このような環境調整は決して怠けでも甘えでもありません。
病気を治し、しっかりと働けるようになっていくために必要な、事前準備です。復職前に担当者と話をし、このような準備をしておくことをお勧めします。
自分がおくれを取っていると焦る気持ちをぐっとこらえ、納得のいく仕事ができるようになるためにも、無理をしない環境づくりをあらかじめ職場で整えてもらうことが大切です。