コロナでも仕事を投げ出せない。精神的につらい。ストレスに負けないためのコツとは

2022/4/12 最終更新

新型コロナウィルスが日本に上陸し、一年が経ちました。制限が多く、不自由を強いられる生活はいまだに続いています。思うようにならない毎日にストレスを抱えている方も少なくないでしょう。それでも皆さまは、仕事を投げ出すわけにはいきません。

働き方はリモートワーク(テレワーク)に移行しつつあると言っても、業務的に通勤している方も多いと思われます。

そんななか、感染のリスク拡大のニュースは連日テレビを賑わせ、心穏やかにいられないこともあるでしょう。自分自身の感染の不安や、身近な人を心配する気持ち。職種によっては、心ない他者に傷つけられる経験もあるかもしれません。

このような時期だからこそ、自分の心身のSOSに耳を傾け、できるだけ健康を保ちたいものです。

  • 不安と戦いながら働くためにできる工夫

    コロナ渦におけるストレスに負けないためのコツ
    ※イメージ写真です

    今や日本全国どこの地域のビジネスパーソンも、感染リスクと隣り合わせで通勤しています。医療従事者はもちろんのこと、今の日本で、どの業種であれば安全というものはありません。誰もが職場での役割を全うしたいと思い、感染の不安と戦いながら働いています。

    義務感の強さは日本人の美徳ですが、つい無理を重ねてしまうと疲労がたまります。

    不安やストレスに耐え、疲労に目をつむって働いているうちはよいのですが、疲労は少しずつ蓄積していきます。ゴムボールの弾力のように、強く圧迫してくるストレスや不安を跳ね返そうとこころは一時的にハイになりますが、これはあくまで一時的なものです。このような状態がいつまでも続くと、弾力を失ったゴムボールは押されたら凹んだまま戻らないように、こころもぺしゃんこになったままになるのです。

     

    ぺしゃんこになったこころは過剰なストレスを受け止めることができません。うつ気分や無力感を覚えるようになります。モチベーションが低下し、仕事の能率も上がらなくなります。自分の仕事ぶりに満足がいかず、自分はだめだという気持ちになることもあります。

     

    今、あなたは不安を押し殺し、無理を重ねていませんか。

    自分がやらなければと、他人の分まで業務を引き受けていませんか。

    明らかにキャパシティを超えていると感じているのに、それでも頑張っていませんか。

    このような方は注意が必要です。

     

    休息をとることは決して悪いことではありません。現在のようなつらい状況だからこそ、普段以上に休息を心がけ、リラックスできる時間を確保しましょう。

    食事や睡眠を大切にしてください。苦しいときは一人でため込まないでください。一生懸命頑張っている自分の働きを誉めてください。親しい人たちとの交流を大切にし、意識的に対話の時間を作ってください。

     

    大切なのは、他でもないあなた自身です。

     

    あなたが大切に思う人を気にかけるように、あなたもあなた自身を気にかけることが重要です。自分を大切にする方法がわからない、という場合は、あなたが大切に思う人を思い浮かべ、その人にどのように接するかを想像してください。その通りにあなたはあなたに接すればよいのです。

     

    あなたには他者への思いやりがあります。その思いやりを少しずつでも自分へ向けるよう意識すると、自分を大切にできるコツがつかめてきます。

  • 長期に渡るストレスの影響。その状況から逃げることさえ諦めてしまう

    長期に渡るストレスの影響。その状況から逃げることさえ諦めてしまう
    ※イメージ写真です

    心理学者のセリグマン(マーティン・セリグマン)は、長期に渡ってストレスから逃れられない環境に置かれた人間や動物は、その状況から逃げる努力すらおこなわなくなると説明しました。

    1年にも及ぶ自粛生活を余儀なくされている私たちは、強いストレスの真っただ中に長期間置かれていたことになります。

    令和3年1月末現在、一部の都府県では緊急事態宣言が発出され、全国的にも在宅生活を推奨する自粛ムードが蔓延しています。しかし、前回(令和2年4月発令)の緊急事態宣言時の生活と比べると、社会生活は少々変化したのではないでしょうか。

    ステイホームで自宅にこもる生活は日常的になりましたが、以前のように職場に出勤し、働くという人も少なくありません。

    満員電車とは言わないまでも、人で混雑するなか出勤し、人と接しながら勤務する。医療従事者に限らず、多くの業種において、勤務形態の据え置きはなされたままです。教育現場を例に挙げるとわかりやすいですが、感染予防を十分に実施したうえで、対面の授業をおこないましょう、というのが現状ではないかと思います。

     

    このような世の中の在り方に問題があると言いたいわけではありません。

    重要なのは、このような環境のもとでも働き続けなければならない人々のメンタルヘルスの問題です。先にも述べたように、長期間、ストレスから逃げられない状況に置かれると、人は様々な心理状態に至ります。

     

    例えば、次のような状態になっていませんか。

    努力するだけ無駄だとすぐに諦めてしまう

    喜怒哀楽に乏しくなる。無感動になる

    自分が何をしたところで結果を出せないと感じる

    気分が沈んで、落ち込みがちになる

    やる気が出ない、モチベーションが上がらない

     

    このような気分の変化は、あなたが強いストレスを受けている影響です。このような変化に気がついたら、自分はストレスに押しつぶされそうになっているのだとまずは認識しましょう。

    あなたしかできない仕事はたくさんあると思いますが、重要なのは、あなたが今後も健やかに働き続けることです。コロナの感染リスクという強いストレスにさらされながら働き続けている自分を誉め、評価することからまず始めてください。

  • コロナ禍におけるストレスに負けないためのコツ

    不安と戦いながら働くためにできる工夫
    ※イメージ写真です

    コロナウィルス感染拡大を防ぐために、私たちは日常生活のなかでさまざまな制約を受けています。

    しかも、この制約は長期間にわたり、先行きも不透明な状況です。

     

    人間は先の見通しが立ち、「ここまで頑張ればなんとかなる」と思うことができれば、辛抱することもできますが、いつまでも続くトンネルのなかにいるような環境のもとでは、徐々に心の健康が損なわれていきます。

     

    生活面でストレスの影響が出ていないか、簡単にチェックしてみましょう。

     

    十分な睡眠をとれていますか

    起床時間は一定ですか。規則正しい生活リズムを保っていますか

    食事をおいしく食べられていますか。また食事にかたよりはありませんか

    コロナ禍以前より、飲酒量が増えていませんか

    軽い運動を継続的におこなっていますか

     

    できるだけコロナ以前と変わらない生活リズムを心がけ、オンとオフのメリハリをつけるのが望ましいです。

    また、ストレス発散に自宅での晩酌を楽しみにしている人も多いと思います。お酒に関しては、コロナ禍以前の飲酒量と比べてみて、著しく増えていないか一度チェックしてみてください。

     

    眠れないからと、寝る前に飲酒の習慣がついている人も同様です。アルコールは一時の睡眠をもたらしますが、睡眠の質を下げ、結局よく眠れないという事態を招きます。

    飲酒量が増加していると感じている方は、ここで一度飲酒の習慣を見直す必要があります。格段に増えたという方は、まずはかかりつけ医を受診し、相談する必要があります。

    とはいえ、数少ない楽しみを断念してしまうのは、ストレス発散の意味でも望ましくないでしょう。他の部分で楽しみを見つける努力をするのがよいです。

     

    お勧めしたいのは周囲とのコミュニケーションです。今は様々なコミュニケーションツールが開発されています。普段電話で済ませる会話を、顔を見ながらおこなうよい機会です。遠方の家族や友人とも気楽にやりとりすることができます。オンラインという便利なツールを活用し、親交を深めるのも悪くありません。

     

    誰かと話すことは気持ちを楽にしてくれる効果があります。同じ悩みを持つ仲間を見つけることで、共感したり、励まし合うことも可能です。心配や焦りを解消する意味でも、積極的におこなうとよいでしょう。

     

    他には、自宅のなかでは難しいという方もいるかもしれませんが、適度な運動もとても重要です。

     

    身体を動かすことで、緊張がほぐれ、血行が良くなります。程よい疲れは質の良い睡眠をもたらします。ストレッチや体操、ヨガや、感染対策を万全にしたうえで軽くウォーキングするなどは、慢性的な運動不足の解消にもつながります。

    これまで運動する習慣がなかった方には絶好のチャンスです。

     

    この機会に、生活を見つめ直し、自分をメンテナンスする機会にしてみるという視点を取り入れてみると、不自由な自粛生活もひとつのターニングポイントにできるかもしれません。

藤澤 佳澄
執筆:藤澤 佳澄
執筆:藤澤 佳澄
大阪大学 大学院人間科学研究科 博士後期課程単位取得退学。大阪大学非常勤講師をはじめ、各種教育機関で教鞭をとる。 メンタルクリニックにて十年弱心理職として従事。「体験型ワークで学ぶ教育相談」(大阪大学出版会)一部執筆。現在は特定非営利活動法人Rodinaの研究所にて、リワークを広く知ってもらうための研究や活動をおこなう。